桃李歌壇  目次

「紘」の字多く

連作和歌 百韻

2601 > この年に生まれた人はすぐ判る「紘」の字多く名に持つ故に
(ジャスミン)
(1128 2117)

2602 > 源氏名のやうな名ばかり続きゐし名簿にゆかしと〈子〉の名前見つ 
(素蘭)
(1129 0018)

2603 > 旧臘の名簿の友のありし日を偲びつ過ぎしひと年をしる 
(重陽)
(1129 0524)

2604 > 生(あ)れかはる星のたまづさ伝へけり恒河沙わたる原子のドラマ 
(素蘭)
(1130 0041)

2605 > 2001年はや暮れむとす草枕しくに由なき太虚の旅よ 
(堂島屋)
(1130 1243)

2606 > モノリスも今だ見なくに暮れむとす2001年HALは乱るる 
(素蘭)
(121 0041)

2607 > 極月のとく来たりては不意なりし余日を満たすよき術もがな 
(重陽)
(122 0948)

2608 > あと一枚となりし今年のカレンダー欄外のメモ一つずつ消す
(ジャスミン)
(122 1119)

2609 > 2001年極月あかるく始まりて希望といふ名を思ひつつをり
(登美子)
(122 1936)

2610 > 選別の思想極まるユートピア〈GATTACA 〉ハウスのサプリメントな夜 
(素蘭)
(122 2149)

2611 > あまがつも四肢歓喜して跳ねつべしハリーポッター的奉祝図 
(堂島屋)
(123 1913)

2612 > 異界へと招かれやすき年らしいハリー11千尋10歳 
(素蘭)
(124 0004)

2613 > 十歳に戻ってみよう鍋底の墨はそのまま真っ黒くろすけ
(登美子)
(124 1650)

2614 > 十歳にして歯科医に通ふ新しき永久歯ほど虫食ひやすき 
(堂島屋)
(124 1845)

2615 > 十歳は頭巾かぶって空仰ぎグラマンめがけ口でダッダッダッと 
(重陽)
(124 2046)

2616 > 六歳は国民学校一年生疎開の子だといじめられてた
(ジャスミン)
(124 2214)

2617 > 苛めつ子世にはばかりて平成も苛められつ子はびこらむとや 
(素蘭)
(124 2318)

2618 > いじめっ子その親もかつていじめっ子げにいじめっ子の種は尽きまじ
(ジャスミン)
(124 2333)

2619 > 香ばしき夕べの凪を尋ねきて焚きし葉の香のとりどりなるを 
(重陽)
(125 0929)

2620 > たもとほる當麻の寺の浄土園朽葉の香りしめやかに立つ
(登美子)
(125 2215)

2621 > たもとほる野辺に凍て菊あはれなるきみが心の花にあらねど 
(素蘭)
(125 2323)

2622 > 在りしもの失せたるけふのあはれなるあしたに萌へむ惜しきもの 
(重陽) 
(126 0823)

2623 > 電脳の空に浮かびし円盤のいらへぬ朝のさびしけるかも 
(素蘭)
(126 2334)

2624 > 宇宙船地球号にてさまよへる同胞繋ぐ電脳の網
(登美子)
(127 0625)

2625 > 液晶の海より高く手を延べてSOSを発したる声
(ジャスミン)
(127 1122)

2626 > 史上初SOSを打電せしタイタニック号いまだ深海 
(素蘭)
(127 1937)

2627 > 深海に大和よ眠れとこしへに眠りは魂を救ふべければ
(登美子)
(127 2257)

2628 > 亡き人の遺灰を海に沈めるは海がみたまを救う故にか
(ジャスミン)
(127 2321)

2629 > 黒潮は滔々流る水底に母父(おもちち)恋ふる霊をとどめて 
(素蘭)
(128 0030)

2630 > 海峡を渡る蝶あり谷底を睨む獅子あり人は夢食ふ
(登美子)
(129 1609)

2631 > 「夢十夜」「こころ」「それから」「虞美人草」まためぐり来し今日漱石忌
(ジャスミン)
(129 1726)

2632 > 口髭のじっと見つめる漱石に親しみつつも今日は忌日と 
(重陽)
(129 1912)

2633 > 草枕朧月夜にまとひたり蕪村句集の春の夜のごと 
(素蘭)
(1210 0035)

2634 > 最終に飛び乗り旅に出でし日を思ひぬ古寺の静寂にゐて
(登美子)
(1210 0938)

2635 > 幕切れはいつもベルの音シンデレラ・エクスプレスは行つてしまつた 
(素蘭)
(1211 0007)

2636 > ガラスの靴女はいつも探してるきっとあるわと大人になっても
(ジャスミン)
(1211 0910)

2637 > そのかみの魔女は灼けたる鉄の沓履きて踊りを踊らされたり 
(堂島屋)
(1211 1802)

2638 > じりじりとやかるるトタン屋根の上マギーは何を見てゐたのだらう 
(素蘭)
(1212 0110)

2639 > 豪雪に千歳空港閉ざされて二日も待つがみんな平穏
(重陽)
(1212 1053)

2640 > ゆくりなく吹雪に帰路をとざされしきみ今機上未だ千歳か 
(素蘭)
(1212 1921)

2641 > 立ちんぼを暫し嘲る雪女郎“冬・JR・快適”の車内広告 
(重陽)
(1213 0953)

2642 > 冬も菜の花咲くふるさと房州は山さへなだらに黒潮に入る
(登美子)
(1213 1900)

2643 > 季を問わず濃き茄子色の親潮は北の魚を抱く母なり 
(重陽)
(1213 1959)

2644 > 波照間の珊瑚月下に生るるとき母となりたき子宮蠢く 
(素蘭)
(1213 2215)

2645 > 太古まづいのちは海に抱かれぬ幾億年経てなほ母は海
(登美子)
(1214 1937)

2646 > 原始地球あまた光に溢れいづ混沌の海われもいだきて 
(素蘭)
(1215 0041)

2647 > 遊びぢゃない暇つぶしぢゃない溢れ出るいのちのままに相寄るふたり
(登美子)
(1215 2326)

2648 > アマデウス言葉遊びにうつけども至福に満つる五線譜のうへ 
(素蘭)
(1215 2344)

2649 > 口に出すときは終わりと知る故に押し込めている「好き」の二音節
(ジャスミン)
(1215 2349)

2650 > ホッチャレの白く流るる澪筋をシャケ黒々と遡りゆくなり 
(重陽)
(1216 0642)

2651 > 〈訂正〉一筋の澪はありけむ深き昏き川隔つともきみと行くため 
(素蘭)
(1216 2040)

2651 > 一筋の澪はありなむ深き昏き川隔つともきみとたどらむ 
(素蘭)
(1216 2038)

2652 > たゆみなき足掻きは見えず水鳥の水脈はしずかに広ごりてゆく
(登美子)
(1217 1852)

2653 > 〈訂正〉白鳥となりし皇子あり羽曳野のかの陵にしづもりてをり 
(素蘭)
(1218 0106)

2653 > 白鳥となりし皇子あり羽曳野のかの陵にしづもりてあり 
(素蘭)
(1218 0029)

2654 > 愛し妻を抱くも旅空日の本にあまねく残る皇子の名あはれ
(登美子)
(1218 0646)

2655 > 考えてみれば殺戮東征の皇子を古事記の叙事詩といふも 
(素蘭)
(1219 0041)

2656 > 寒風に実柚子の日ごと色なして湯に香りたつ叙情を待てり
(重陽)
(1219 1825)

2657 > 襲ひ来る寒気はむしろ小気味よし茜さしゆく東雲の空
(登美子)
(1219 1922)

2658 > 茜さす紫雲ぞ愛しけやし恙なき日のしるしと思(も)へば 
(素蘭)
(1220 0037)

2659 > 寒雲の矢切の渡し寂しかり集ひし夏の賑はひし日を
(重陽)
(1220 0519)

2660 > 喧騒の街逃れ来て山茶花の白きがほっかり咲く垣に会ふ
(登美子)
(1220 1716)

2661 > 風花の舞ふ日御堂に置かれゐし白き棺も家族の歴史 
(素蘭)
(1221 0041)

2662 > 遥かなるDNAに詩ありぬ我今ありて何処へゆくや
(重陽)
(1221 0516)

2663 > この刹那次の刹那に過去となり歴史の果てまで150億年
(登美子)
(1221 0619)

2663 > 訂正>一刹那刹那を歴史に組み入れて宇宙粛然と未来へ雪崩る
(登美子)
(1221 1615)

2664 > 完結と持続の誤差の曼陀羅はおとこおんなの永久の命題
(ジャスミン)
(1221 0936)

2665 > フェルマーの定理解かるる数式の美しかりき曼陀羅のごと 
(素蘭)
(1222 0105)

2666 > 窓越しに錆びゆく木々の連なるを薄日の空にわれは楽しむ
(重陽)
(1222 1117)

2667 > 一筋の澪はあらまし深く昏くひとのこころに澱める河の 
(素蘭)
(1223 1037)

2668 > まだ丸くなりたくないと石ころは早瀬の岩にぶつかって行く
(登美子)
(1223 1725)

2669 > 遮るものあると知りつつ退かず進むはわれの妙なサガなり
(ジャスミン)
(1223 1819)

2670 > 遮断機の向かうにきみは立つてゐる他人のかほをつくろひながら 
(素蘭)
(1224 0040)

2671 > もっと前に逢っていればと君は言うが今逢うことがそれかも知れぬ
(ジャスミン)
(1224 1604)

2672 > 美しき言葉は過去の仮定形未然に深き悩み醸せり 
(重陽)
(1224 1856)

2673 > 人間の言葉も煌めく聖夜なり 愛のささやき平和の祈り 
(ギオ)
(1224 2219)

2674 > 恩寵とつひにはならぬわれの血の半ば遺さる聖誕の朝 
(素蘭)
(1225 0105)

2675 > 年の夜へ七夜ばかりをたひらにとこの年の瀬はことに祈らむ
(重陽)
(1225 0749)

2676 > 歳晩の街にルージュの濃き少女ムンクの叫びも行き交いており
(ジャスミン)
(1225 1053)

2677 > フィヨルドの海にたなびく茜雲永遠の叫びに震へゐにしか 
(素蘭)
(1226 0051)

2678 > 正義とふ暗雲地上を覆ひ尽くし孤絶の叫び興きては途絶ゆ 
(ギオ)
(1226 0132)

2679 > 和魂(にきたま)と荒魂ありとふバリ人は諸神祀りてさきはひ満てり 
(素蘭)
(1227 0119)

2680 > 八百万の神はいませど万葉の恋人ひたに母の目怖る
(登美子)
(1227 0620)

2681 > いとやすくケータイ番号かはしをり道行く人をたれと知りてか 
(素蘭)
(1228 0106)

2682 > かりそめにきのふのゆふべWEBてふちまたに会ひてけふはメル友
(登美子)
(1228 1841)

2683 > 一つ身に複数の名を持ちおればネット人格なる不思議さも
(ジャスミン)
(1228 2128)

2684 > 電網は地球を覆ふ神経系 すでに<人格>備はりたるや 
(ギオ)
(1228 2308)

2685 > 天網は恢恢なるや繕ひを忘れほころぶ一枚の布 
(素蘭)
(1229 0036)

2686 > わが心もし凝らせなば蝋梅のほころび初めし色にかも似む
(登美子)
(1229 1726)

2687 > 訂正>蝋梅は危ふい造化の細工かな そつと触れたい春の恩寵 
(ギオ)
(1230 0052)

2687 > 蝋梅は危ふい造化の細工かな そつと触れたき春の恩寵 
(ギオ)
(1230 0048)

2688 > 世にあらむかたちに六つの花びらとなりて降りくるたまゆらの夢 
(素蘭)
(1230 0118)

2689 > おほとしのともに卒寿の父母のすこやかなるを夢に見ばやと 
(重陽)
(1230 1120)

2690 > またの世にさらぬ別れのなくもがな千代に八千代に祈りきつらむ 
(素蘭)
(1230 1159)

2691 > 訂正>陽水の歌のごとくに母老いて人生一度でええわと笑へり
(ギオ)
(1231 0041)

2691 > 陽水の歌のごとくに老いた母 人生一度でいいと笑へり
(ギオ)
(1230 2333)

2692 > 青空を歌ひて悲し陽水の高き声音の吸はれてゆかむ 
(素蘭)
(1231 0101)

2693 > 大年の過ぎたるほどの青天を凪の浜辺でひとり楽しむ 
(重陽)
(1231 0816)

2694 > 年々に日の経つ速さ感じつつまた新しき年の始まる
(ジャスミン)
(11 0045)

2695 > 皮ジャンの防寒コートに身を寄せし若き二人に浜の元朝
(重陽)
(11 1059)

2696 > 小さきものみなうつくしや幸せのかけら集めて玉の緒に貫く
(登美子)
(11 2207)

2697 > 玉の緒の絶ゆることなき言の葉のにぎははしけれあらたまの年 
(素蘭)
(12 0007)

2698 > あまたなる言の葉あれどわがまつはいまは沙汰なき君が言の葉 
(重陽)
(12 0641)

2699 > いにしへの栄華の跡の公園にただ松風が渡る元朝
(登美子)
(12 2000)

2700 > わたくしに出来るところのひとつひとつ些末なること喜びとして 
(しゅう)
(12 2303)