桃李歌壇  目次

躑躅の中に

連作和歌 百韻

3101 > 築山のこんもりとした植え込みのにほい立ちたる躑躅の中に 
(蘇生)
(516 0457)

3102 > ふつふつとたぎる心を鎮めかね見やれば躑躅は火の色に燃ゆ
(登美子)
(516 2036)

3103 > やは肌の下の灼熱しづめては生命育む母なる、星は
(ぎを)
(516 2306)

3104 > 新しき星の生るるや沈丁の花の香満る紫微垣(しびえん)の闇 
(丹仙)
(517 0741)

3105 > 初夏の光のすべる茅の葉に七星天道虫の恍惚
(たまこ)
(517 0852)

3106 > 近づくは「スター・ウォーズ」の幕開きぞ燃ゆる悲恋に涙ときめく
(ぽぽな)
(517 1052)

3107 > 幕開くとて燃ゆる日の怨めしき十連敗の星の軍は
(浜きち)
(517 2055)

3108 > 森陰にひそみ咲けども十薬の白き十字は闇をあざむく
(登美子)
(517 2308)

3109 > 十薬の花の咲きそむ根津の谷、夢見の流れや暗渠の川は
(ぎを)
(518 0048)

3110 > 垣間見ゆ川の流れに近づけば遊ぶ童が光り輝く 
(綺澄)
(518 0319)

3111 > 窓の外明るく過ぐる幾波にも黄色の傘の登校の子ら
(蘇生)
(518 0522)

3112 > ミッキーもミミーも居るよ舞浜の駅は色とりどりの風船  
(丹仙)
(518 1518)

3113 > 鏡なすあちらこちらの水たまり虹おのおのに麗姿を見つむ(

(ぽぽな) (518 2159)

3114 > 魚になる夢を見るよに雀の子小首かしげて水浴び始む
(登美子)
(518 2334)

3115 > そこかしこ土手道うがつ潦ふめば痛いと顔を出す河童
(ぎを)
(518 2338)

3116 > 河童忌に河童落ちたる梓(あずさ) あわれに眺む河童橋かな
(ぽぽな)
(519 0330)

3117 > 尻子玉抜かれちゃならぬと猛特訓はれて卒業かなづちの日々
(綺澄
) (519 0427)

3118 > そそくりし四十五年のなりはひをおさめあしたの望みおはばや
(蘇生) 
(519 0718)

3119 > 桃李(ももすもも)七部に納め刊行の画餅(わひん)に生きむけふのこの日を 
(丹仙)
(519 1306)

3120 > 短夜に七部集など紐解きてのっと日の出を拝む江ノ島
(蘇生)
(519 1432)

3121 > 丘ひとつ埋める微塵の家々の人のくらしに朝日がのぼる
(たまこ)
(520 0832)

3122 > 一吹きの塵こそ神に等しけれ有りて有るもの朝日に舞ひし
(丹仙)
(520 1452)

3123 > 獣の棲む下界に墜ちし神の樹に今宵も天ゆ雷電下る
(ぎを)
(521 0021)

3124 > 二組の母子の間にワイン酌む弾む会話に今宵楽しき
(蘇生)
(521 0510)

3125 > 孫抱く母の唄へる子守歌とほき記憶に吾もまた聞けり
(丹仙)
(521 0959)

3126 > 汝は誰ぞ雨の音符を陽につむぐそれが五月と風答ふなり
(かのん)
(521 2011)

3127 > うすもも色の花を五月の空へ向け浜ひるがほは光の漏斗
(たまこ)
(521 2211)

3128 > 五月闇潮のごとく蒼ければ月はしづくを灯して渡る
(登美子)
(521 2344)

3129 > 五月雨や久方ぶりの訪れに緑湧き立ち土謳い出す
(ぽぽな)
(522 0112)

3130 > 満月の照らす岩根の傍らの森に眠れり、東京の鴉
(ぎを)
(522 0143)

3131 > 暗闇の外套つけて今日もまた光求めて彷徨う旅人
(綺澄)
(522 0330)

3132 > ぬばたまの髪に波音刻めども空はまぼろし海はまぼろし
(かのん)
(522 0923)

3133 > つくづくと空眺むれどたまゆらに見しおもかげの胸にたゆたふ
(登美子)
(522 1036)

3134 > 玉響のおもかげなれば空におき折々のうた風に託さむ
(かのん)
(522 1144)

3135 > その声に水面を揺らしまなざしに紅に染む我は海なり
(ぽぽな)
(522 2307)

3136 > 鰭のない私はさかな霧青くうづまく街に方位失ひ
(たまこ)
(523 0816)

3137 > 菜単をみれどチンプンカンプンで清蒸桂魚てふさかなを頼めり
(丹仙)
(523 2127)

3138 > UFOやなんじゃもんじゃやカンガルー不思議の尽きぬ世ぞおもしろき
(登美子)
(523 2310)

3139 > 不思議の樹なんじやもんじやと尋ぬれば主こそなんじやと木霊の声す
(ぎを)
(523 2324)

3140 > そんなこと言ってるうちに仙人の木から落ちたる故事在りしとか
(茉莉花)
(524 0113)

3141 > 燃え上がるみどりその樹につつまれて梟もまた黄泉かへりたり 
(丹仙) 
(524 0759)

3142 > 木漏れ日に小枝を抱く蛹ありいつか飛ばむと夢も抱くか
(ぽぽな)
(524 1014)

3143 > 初夏の中洲は萌黄のステーションやがてここより発つゆりかもめ
(たまこ)
(524 1114)

3144 > いにしへを偲ぶよすがを橋の名に残す大川ゆりかもめ飛ぶ
(登美子)
(525 0608)

3145 > くねくねとビルをぬひゆく「ゆりかもめ」ブリッジゆれてゆりかもめ追ふ
(蘇生)
(525 0810)

3146 > とうすみの小さき吐息触れたるや恋の浮橋ゆらりゆらりこ
(やんま)
(525 0816)

3147 > 小さき手は吾が手の内に小さき手は天をさしたり横断歩道
(かのん)
(525 1029)

3148 > むらさきに染まりし指よ妹が摘む桑の実満てり小さき帽子に 
(丹仙)  
(525 1156)

3149 > 桑の実を手に跨ぎたる枝間より機銃掃射のグラマンの人 
(蘇生)
(525 1923)

3150 > 初夏の夕べ街の語らひ息絶えて静謐つんざく戦闘機かな
(ぎを)
(525 2325)

3151 > 気がつけば胸を貫くクピドの矢 ときめき走りて夏始まりぬ
(ぽぽな)
(526 0004)

3152 > 薄ものに肌を曝せる娘らの若さ羨しく夏はじまりぬ
(茉莉花)
(526 0953)

3153 > ベル鳴りて冬を残せし二の腕のわが頬かすめ吊り輪に向かう 
(蘇生)
(526 1705)

3154 > 乙女らの奢りの春も昔にて女の四肢に挑まるる夏
(ぎを)
(527 0142)

3155 > あまがえる水はじく肌うらやまし雨上がりには共に泳がん(

(綺澄) (527 0404)

3156 > 羊歯の玉ゆるり解けゆき雨粒は太古の水の夢につらなる
(かのん)
(527 0959)

3157 > さまざまな紆余曲折をみせながらガラス窓を下る雨の粒つぶ
(たまこ)
(527 1156)

3158 > 天蓋に拍手の如き雨つぶのありて六月花嫁迎ふる 
(丹仙)
(527 2005)

3159 > 梅雨の夜を戻りて一間のアパートに君の短き文読みかへす
(登美子)
(527 2319)

3160 > 君の文ふりみふらずみ待ち待ちて水面の月の影となるかな
(かのん)
(528 0834)

3161 > もうおまへは雨に還つたのだらうか両肩を包むやうな雨音
(たまこ)
(528 2321)

3162 > 窓を打つ雨音闇に聞きながら青空夢見るてるてるぼうず 
(ぽぽな)
(529 0021)

3163 > 晴れたならいいね、否否(いないな)晴らさねば てるてる坊主になつてしまはむ
(たまこ)
(529 0513)

3164 > ちはやぶるはたた神なる饗宴は連戦なるとも衰ふ気もなし  
(蘇生)
(529 0522)

3165 > 羨しきは日ごととどろくはたた神誰を恋ふとてさは名告るらむ
(登美子)
(529 0907)

3166 > 雷(いかずち)は時計仕掛けのバネち切り眠る野性を突き起こす(

(ぽぽな) (530 0100)

3167 > 誰が為光り輝く春の夜に神の鉄槌雄叫びとともに
(綺澄)
(531 0336)

3168 > 黄金色に光るさみしさ荒れはてし島の畑のたははの蜜柑
(たまこ)
(531 1931)

3169 > 風に舞ふ花と見紛ふ 水下ふ赤よ金よと翻る魚(うを)
(ぽぽな)
(531 2346)

3170 > 東雲の雲か海かの水平に啓示のごとき光ありなむ 
(蘇生)
(61 0840)

3171 > 水平線の果てには灯りがあることを思へよ決して独りではない
(たまこ)
(61 1145)

3172 > 古池に飛びし蛙は今もなほ軽やかに越ゆ時の地平を 
(丹仙)
(61 1622)

3173 > 言の葉は青葉若葉と萌え出でて果てなき命の地平を語る
(ぽぽな)
(62 0335)

3174 > 生命の相寄る力に抗ふを我ら悲しく愛恋といふ
(ぎを)
(63 0123)

3175 > ものなべて激しく醸すときをへむ待つなむときを熟し成るまで 
(蘇生)
(63 0926)

3176 > 時はいま一途に青き梅の実を琥珀に醸すべく始まりぬ
(登美子)
(64 0612)

3177 > ‘61なる類い稀なるヴィンテージ熟し成りたりテロアを想ふ 
(蘇生)
(64 0941)

3178 > 影長く旅の途中に振り向けば夕焼け琥珀に陽を宿しゆく
(ぽぽな)
(64 1014)

3179 > 紫の朝焼けそして残照のシベリアいまだ我が胸にあり
(茉梨花)
(64 1048)

3180 > 山小屋の灯りを胸に点したいさみしいさみしい夏の予感す
(たまこ)
(64 2111)

3181 > さまざまに過ぎし夏の日、下腹に熾火のごとき淋しさ有りて
(ぎを)
(65 0118)

3182 > 駆け抜けた少年の恋夏の日は日焼けの跡をひりひり残し
(登美子)
(65 0746)

3183 > 淋しさに千里を駈けて来たと言ふまだ君は此を恋と知らずに
(ぽぽな)
(65 0832)

3184 > いつのまに吾が名三文字で呼ばれをりさんを何処へ君隠したる
(かのん)
(65 1758)

3185 > 様は無く、さん、君、ちゃん、も無しがいい呼べば親しき二文字三文字 
(蘇生)
(65 1909)

3186 > タイムトンネル揃つてくぐる同窓会ふるさと訛にたちまち戻り
(たまこ)
(65 2057)

3187 > この小径抜けてみようか桑の実の熟れる野原に飛び出せそうな
(登美子)
(66 0637)

3188 > ちょっとだけ遠まわりしてみようかなミモザ手招く横道小道
(ぽぽな)
(66 1019)

3189 > 鳥飛べば鳥の如しと天心の老師脇見の雁となりけり
(丹仙) 
(66 2340)

3190 > 低空に群をなしたる浜鳶は子の手の菓子を将に襲うぞ
(蘇生)
(67 0900)

3191 > 電線に十羽あまりの鳶のゐて討ち入り前の整列のやう
(たまこ)
(67 1041)

3192 > いとほしやビルの木立を縫ふ鳥よ我も進まむ颶風を切りて
(ぽぽな)
(68 0125)

3193 > ビルとビルに挟まりて小さき民家あり窓に真白きカーテンを閉め
(たまこ)
(68 0741)

3194 > 並び立つ乾いたビルも百色の公園(パルク)の緑に窓潤せり
(ぽぽな)
(69 0003)

3195 > 自分で自分をなぐさめたい日の食卓は萌え出るやうな緑のクロス
(たまこ)
(69 0715)

3196 > 大きめの紅茶カップにアールグレイ満たして一人のティータイム流る
(茉梨花)
(69 0816)

3197 > 初勝利ブルーが燃えしW杯今宵仏(ほとけ)も甘露に酔ふらし
(ぽぽな)
(610 0559)

3198 > 首相までメガホン持つて「燃えたなあ」なにかおそろし熱狂列島
(たまこ)
(610 1429)

3199 > 混とんの世にFIFA2002げに虚ろなむとき過ぎゆけば
(蘇生)
(611 0424)

3200 > 川べりの恋の蛍にことよせて虚しきときを過ぐしつるかも
(登美子)
(611 0548)