桃李歌壇  目次

影絵

連作和歌 百韻

3301 > 東雲の小高き丘の稜線の黒き影絵が色づくまでを 
(蘇生)
(94 0535)

3302 > 三里超す遠深き空にほの光る白きオーロラ何に喩へむ
(ぽぽな) (95 0033)

3303 > 飛び立たん蒼の深きに誘はれて光舞ふてふ極北の空
(登美子)
(95 1643)

3304 > けふの秋いろなき雨のたのしけれみどりとわれはおなじ恵みに 
(蘇生)
(96 1046)

3305 > 信濃路は秋風吹けどなほ熱くなほしなやかなり改革の路
(ぽぽな) (97 0612)

3305 > 来来世世は雨に還らむ咲き残る白さるすべりにやはらかな雨
(たまこ)
(97 0613)

3307 > もつれ飛ぶ白き秋蝶たちまちにをもめも分かず遠のきゆけり
(登美子)
(97 1922)

3308 > 重九を迎えんとしてわれの代は激し六十有余年かな  
(蘇生)
(98 1444)

3309 > 瑞数の重なる朝に御よはひいや増す幸をことほぎまつる
(登美子)
(98 2307)

3310 > 天地(あまつち)の間(あはひ)を通す鎌倉の浜に長濤尽くることなし
(丹仙)
(98 2325)

3311 > 重ね詠む偶然と言ふえにしさへ連れて続けり桃李の秋は 
(ぽぽな) (99 0348)

3312 > 重ね詠むげに重九のカキコにも星に託せし願いあるやも 
(蘇生)
(99 1821)

3313 > 鎌倉は美男におはすみほとけのきみに菊酒今宵酌ままし 
(素蘭)
(99 2338)

3314 > 今宵また酒酌み交はさむ待ちわびし人見いでたる喜び重ねて
(登美子)
(910 0606)

3315 > 菊の葉の露汲みかはす祝言の千代にめでたき文ぞ続かむ 
(丹仙)
(910 0830)

3316 > 重九の明けにし今朝の山緑なにやら兆す錆の色など 
(蘇生) 皆様ありがとうございます
(910 0932)

3317 > また一つ鎮魂の鐘鳴らんとす高き空なり星島九月
(ぽぽな) (911 0649)

3318 > 白き耶蘇みな偽善者なりとイスラムを説く米国の留学生ありき 
(丹仙)
(911 1844)

3319 > グラウンドゼロに砂塵は舞ひ立ちて消せぬ怒りを祈りといふか
(登美子)
(912 0553)

3320 > 繰り返す9イレブンの映像に祈りは見えず悲しみの詩  
(蘇生)
(912 0731)

3321 > 汝の心深き淵なり悲しみも祈りの声も届かじと思ふ 
(丹仙)
(912 2248)

3322 > 秋冷のわずかに固き朝ぼらけ目覚めてはまたうたた寝や好し 
(蘇生)
(913 0745)

3323 > 思ふまま燃えし季経て野に山に緑ゆたけきまどろみに入る
(登美子)
(913 1819)

3324 > 立ちのぼる夜気にみちたる秋の香にしばしの雨のありがたきかな
(蘇生)
(914 0502)

3325 > 山恋しまなこ閉じては 芳しき花野に戻りきビルの谷間に
(ぽぽな) (914 2216)

3326 > ビル谷間うごめく吾の葛藤を癒すがごとく秋風の吹く
(
素人) (915 2358)

3327 > さやさやと吹く風にさへさゆらぎて萱原に穂はうすく紅さす
(登美子)
(916 1754)

3328 > 紅に頬染めし人草原を名残の火照り覚まさんとて歩む
(素人)
(916 1843)

3329 > 五歌仙を巻きし余韻の醒めやらで表合(おもてあはせ)ぞ名残に映ゆる
(丹仙)
(918 1354)

3330 > 鐘の音の余韻嫋嫋秋夕べ異国に果てし子らを弔う
(素人)
(919 0110)

3331 > 咎なくも奪はれし玉の命あり想へば秋の空潤みゆく
(ぽぽな) (919 0426)

3332 > 奪はれし生命無念や慟哭すこの憤り何にぶつけむ 
(素人)
(919 1010)

3333 > 花むくろ十日夜をほろほろほろと産土の地はかぐはしきかな
(登美子)
(920 1827)

3334 > 産土に昇りくる月恋しかり深まる秋を異国に独り 
(素人)
(921 0649)

3335 > ほろほろと友恋ひしげに呼ぶ鳩をいただく寺の秋の夕暮れ 
(ぽぽな)
(921 0958)

3336 > 名月に好きなワインを捧げては出て来い出て来いアマローネ!と
(蘇生)
(921 1827)

3337 > ラトゥールのワインとやらに酔ひたるは無月のかがよひ妖しき一夜(登美子) (921 2011)

3338 > ふけぬらむ空にぞ月はかかれどもさゆるばかりに見がてにあるぞ
(素蘭)
(921 2335)

3339 > 歩むたび共に進める誠実と姿変へゆく不実の月よ
(ぽぽな) (921 2358)

3340 > 皓皓と赤面もせぬ名月に菫もがなの漱石やいかに 
(蘇生)
(922 0730)

3341 > 百年を待ちたる後の白百合は月の精はた夢の女か
(茉莉花)
(922 1150)

3342 > 仮面脱ぎ己に戻りて水を飲む醒めし女を照らす月あり 
(素人)
(922 1853)

3343 > 芦原の闇より満月ながむれば栄枯の響きや虫どもすだく 
(ぎを)
(922 2256)

3344 > 名月にみやびなきまで虫すだき雨月の今宵いずこへゆかむ 
(蘇生)
(923 0903)

3345 > いざ君と探しにゆかむ街の灯の高き林に迷ふ明月 
(ぽぽな)
(923 0940)

3346 > 無為の日を絶叫したるあの頃の月洸々と今も静けき
(やんま)
(923 1132)

3347 > ムンクの絵あの絶叫は鮮烈に今なほ吾が胸ときめきのある 
(素人)
(923 1220)

3348 > ひたひたと無月の胸に満ちてくる潮に揺られゐるこの日頃
(登美子) (923 1704)

3349 > 我が胸に引きては満ちくる思ひありせめて干上がれ満月の夜は
(ぎを) (923 2132)

3350 > 潮入りの川を満たしつ初潮がせり上がりつつ小波立てり 
(蘇生)
(924 1945)

3351 > 長月の夜は有明を待ちながらはかなき秋ををしむべらなり 
(素蘭)
(924 1954)

3352 > 人恋ふる秋とはなりぬ去年の月ともに見し人疎かとなるも 
(ぎを)
(924 2205)

3353 > 宵闇におちこちすだく声のしてすだくは虫も同じなりけり 
(蘇生)
(925 0535)

3354 > 待ち人は来たらず宵闇迫る街それも人生秋の燈ともる
(ぎを) (926 0014)

3355 > 暗闇のあとに必ずあしたてふ女神あらわる露をまとひて
(ぽぽな) (926 0728)

3356 > 鴇色に連なる浅葱の涼やかにいま明けんとすひんがしの空
(登美子)
(926 2208)

3357 > 鴇色はカラーチャートのなかにあるたれも知らないあしたのやうに
(素蘭)
(927 0039)

3358 > こしかたのひと日ひと日にいろあらむわが人生はさしてなにいろ 
(蘇生)
(927 0844)

3359 > 謂れなき名は負ひたれど曼珠沙華一途に赤きしべ掲げをり
(登美子)
(927 1731)

3360 > いはれある磐余の池に鳴く鴨は今日渡れるや秋闌けぬらむ 
(素蘭)
(928 0046)

3361 > 二上の山に御魂の安かれと入日拝みたもとほりつる
(登美子)
(928 1633)

3362 > 午前二時眠らぬ街の地下駅の胡乱の群れの一つとなりぬ 
(ぽぽな)
(929 0340)

3363 > 花金の海辺の夜を疾駆するわが世とばかり集く若者  
(蘇生)
(929 1343)

3364 > 望月の欠けたることなきまぼろしを露の世に見しいにしへ人はも
(登美子)
(929 2342)

3365 > 露の世は露の宿りに露の身を露の間おきて露ぞかわかぬ 
(素蘭)
(930 0036)

3366 > 露霜の消ぬべき時ししかと知る人のみ迷ふ命の果たて
(ぎを) (930 0127)

3367 > 幾年もジャンピング・ジャック・フラッシュの石火のリズム駆け巡るなり
(ぽぽな)
(101 0102)

3368 > 盛秋にただひたすらに身をおきて虚ろなりせば心満たせり 
(蘇生)
(101 0511)

3369 > 秋草はゆるる絃なれひたぶるに鉦打ち鳴らす虫とあはむに 
(素蘭)
(103 0114)

3370 > 高く澄む音が静かに流れ出でわが若き日の恋揺りおこす
(登美子)
(103 1638)

3371 > 折々のそぞろの風に人恋しそは何故か深まる秋の 
(蘇生)
(103 2054)

3372 > 失ひし恋の形見はおちこちにふつとあらはる泣けとごとくに
(ぽぽな) (104 0939)

3373 > 夏の穴があいた靴下履き替えて旅に出ようよ人恋しき秋
(登美子)
(104 1822)

3374 > ゆく先を風に聞かむと差す指にとんぼ止まりて小首傾げをる
(ぽぽな)
(105 2312)

3375 > 声なくも夕空さはにいろどへるあきつあかねは胸につぐべし 
(素蘭)
(106 0110)

3376 > ゆく径のたわわに赤き七竃すでにおさなき母たずねんと  
(蘇生)
(106 0358)

3377 > 数へしは秋の七草幾たびも暮るる轍に母の背追ひつ
(ぽぽな) (106 2250)

3378 > 里近く出会ひし桔梗の一輪にけふの山旅ゆたかに終る
(登美子)
(107 2234)

3379 > きちかうはきちとかうとのかさねにてくれなゐあゐににほふ紫 
(素蘭)
(108 0102)

3380 > 窯変のさまに染めかく柿紅葉いとさりげなく膳に添ひたり 
(蘇生)
(108 0848)

3381 > 脱ぎ捨てし殻見返らず美しき羽を生ほして蝶は舞ひ立つ
(登美子)
(109 2257)

3382 > 強かりき母のおもては優しかり黄泉への舞いを日々さぐるやに 
(蘇生)
(1010 0614)

3383 > 髪梳くや菟原処女がししくしろ黄泉に待たむと今宵逢はむと 
(素蘭)
(1011 0038)

3384 > 医の友は一病たりとも滅するとやよろず枯れるを待つも果てなき 
(蘇生)
(1011 0551)

3385 > 八百万の琳瑯も言ひ尽くせぬは唯一無二なる柞葉の母
(ぽぽな) (1013 0126)

3386 > ことごとの言い尽くせぬは何故か伝えん意志の乏しき故か 
(蘇生)
(1014 1036)

3387 >届いたかそうかとだけで母を呼ぶ電話の父のいつものパターン
(登美子)
(1015 1603)

3388 > 獅子庵に二見台あり獅子老の遺墨にめをと岩あるゆゑん 
(素蘭)
(1015 0119)

3389 > 伊勢の海男岩女岩の通ひ路の太綱に照るうらら秋日は
(登美子)
(1015 1605)

3390 > 那智滝のたちまち変わる形相のそこによろずの神がおわすを 
(蘇生)
(1016 1924)

3391 > よろづ世に語り継ぐべき名も持たず滅びしものの芒野ありや 
(素蘭)
(1017 0111)

3392 > 芒野の根方に生ふるおもひぐささやかに照らす後の名月
(登美子)
(1018 2242)

3393 > 星影をたどりて人を思ひをればいかに夜長のはや開けぬるか
(ぽぽな) (1019 2359)

3394 > 一家の火影に萩のなまめきて一夜の夢のやすらけくこそ 
(素蘭)
(1020 0023)

3395 > 久々に風邪なるものに罹りたりやすきに沈む日々を過ごしぬ 
(蘇生)
(1020 0952)

3396 > 釈迦牟尼も尊みたまふものならし少病少悩いかで愧づべき 
(堂島屋)
(1020 1936)

3397 >大虹が東に懸かる夕暮れの西に明るき明日が見えり 
(蘇生)
(1021 1824)

3398 > ひんがしに日は目覚めたり西に立つビルの面に朝鏡せり
(ぽぽな) (1022 0010)

3399 > 虚像のみとらふ鏡よ等距離にふたりのわれがわれをまもりつ 
(素蘭)
(1022 2137)

3400 > しりぞけば影も遠のく埋め得ぬあはひに満つる時空のミスト
(登美子)
(1023 1639)