桃李歌壇  目次

朝寝髪

連作和歌 百韻

1401 > 人知れぬ夜が明けぬれば朝寝髪あと少しだけリバーサイドに 

(春秋) (211 0447)

1402 > ユニクロのペアールックのきぬぎぬの時惜しむかに春磯に立つ 

(重陽) (211 1102)

1403 > ジァンジァンにプラネタリウム渋谷より撤去さるらし春惜しみつつ 

(素蘭) (211 1425)

1404 > プラネタリウム出でて見上げし都会の空一等星だけ単純明快 

(萌) (211 2307)

1405 > 赤道を越えたる旅ぞ漆黒の夜空の北に仰ぐ白鳥 

(素蘭)
(212 0125)

1406 > きたのきた青白き島りんどうの紫の園ノースクロスや 

(春秋) (212 0223)

1407 > いにしえの法王をりし城門の夾竹桃の盛んなるかな 

(重陽) (212 0548)

1408 > 城壁に立ちて叫びしカテリーナ 塩野七生のペンに息づく

(素蘭) (212 1307)

1409 > 賢帝にさもらふ古き哲人の如くならまし御伽衆われ 

(堂島屋) (212 1811)

1410 > 流離ひし草にしのぎし乞食の何をか得べし衆に無きこと 

(重陽) (212 1934)

1411 > 雪降れば托鉢とてもままならず五合庵なる漂泊詩人 

(素蘭) (212 2217)

1412 > 時に我 漂泊詩人の気概もて真実のみに触れむと欲す 

(萌) (212 2251)

1413 > 商標や オレンジにAirTechフワリHair Bleachで      

(耽空) (212 2346)

1414 > 亜麻色の髪なびかせて乙女子はふらここ揺らす春の夕暮れ 

(素蘭) (213 0055)

1415 > 揺れ惑ふ舞たるしずか春の夢乙女となりし山手の人 

(春秋) (213 0630)

1416 > 子らの声朝な夕なの時ありし宅地の冬の静かに暮るる 

(重陽) (213 0756)

1417 > どの道をわれは来たりし山椿の咲きゐしことが記憶のすべて

(たまこ) (213 1101)

1418 > 春寒き室戸の海へ散る赤の今めぐりつつ落ちてゆくなり 

(堂島屋) (213 1249)

1419 > 徘徊の黒き原潜小船打ち海の若人未だ帰らず 

(重陽) (213 2000)

1420 > 如月の海蒼くして水底に沈める船を嘆き見やれど 

(素蘭) (214 0123)

1421 > 原因究明よりもただちに母ならば海底の子を抱きたからむ

(たまこ) (214 1115)

1422 > お前がね生まれたときは小さなで産湯でねそうすやすや寝てね

(重陽) (214 2144)

1423 > 街かどが歯抜けのようにまた一軒変わってゆけど残る銭湯 

(萌) (214 2332)

1424 > 空洞化嘆く声さへ力無く老舗一軒のれん下ろしぬ 

(素蘭) (215 0048)

1425 > 孫たちも藍の浴衣でおばあちゃん日永嬉しき健康ランド 

(重陽) (215 0635)

1426 > 振り袖を揚羽のごとくかざりをり廃業まぢかの呉服の「紅屋」

(たまこ) (215 0657)

1427 > 延々とレジに列なすカルフール三色の旗子らの瞳に 

(重陽) (215 1018)

1428 > 早春の風に乗りたき心地して三色菫窓辺に飾る 

(素蘭) (215 1415)

1429 > 森ふかく冬の苺の熟るる場所ヒミツにしたいことのひとつは

(たまこ) (215 1741)

1430 > 丹精をそそぎ伝ふる冬薔薇や日系人も五世となりぬ 

(堂島屋) (215 1821)

1431 > 「樹齢は」と問へど答ふる人もなき父丹精の盆栽残る 

(素蘭) (215 2048)

1432 > 樹齢千年からが一人前という大洋の中に聳えたる島 

(萌) (215 2351)

1433 > 光風や時をかけゆき菩提樹にまばゆき遠き面影さざなむ 

(春秋) (216 0021)

1434 > 『冬の旅』第五曲なる『菩提樹』を合唱せしこと淡き思ひ出 

(素蘭) (216 0109)

1435 > さはやかに隠れし人もありにけり旅に生きたる介子推おもふ 

(堂島屋) (216 0932)

1436 > さやうならと振る手の白さに早春の空をよぎりてゆくは何鳥

(たまこ) (216 1259)

1437 > めぐりきて惑ふ間となく長となり惑ひし日々の虚しくあらむ

(重陽) (216 1309)

1438 > 虚辞虚勢張れども心露はなる臆面もなき言のあはひに 

(素蘭) (216 1904)

1439 > 露わなる地層の乱れ思うとき富士山の異変ひと事でなし 

(萌) (217 0016)

1440 > 不穏なる地殻の軋み何処よりいつまた地震(なゐ)の報や届かむ 

(素蘭) (217 0120)

1441 > 夕さりて燃え尽きたるほど風吠えて込みあげさうなムンクの叫びや 

(春秋) (217 0332)

1442 > 惑ふがにふる春の雪いつになれば生きゆくことに馴れられるのか

(たまこ) (217 0834)

1443 > あはゆきのなべて消へゆくことの由ことはしばしの枝にむつまむ 

(重陽) (217 1037)

1444 > 世にあらむ刹那耀ふ結晶のあはれ淡雪水に還らむ 

(素蘭) (217 1639)

1445 > 遥々の伏流清き柿田川冨士の白雪幾世隔てむ 

(重陽) (217 1850)

1446 > 細やかな流れをみせる藻を見つつ水辺の散歩に心魅かれる 

(萌) (217 1956)

1447 > 菜の花の香ほの匂ふ水郷をそぞろ歩かむ春の夕暮れ 

(素蘭) (217 2253)

1447 > 菜の花の香匂ひたつ水郷をそぞろ歩かむ春の夕暮れ 

(素蘭)  (217 2339)

1448 > 休耕のまばらに黄む菜の花のおどろの様もあはれうつくし 

(重陽) (218 0723)

1449 > あの日から別れは始まつたのだけど胸いつぱいに摘んだ菜の花

(たまこ) (218 0933)

1450 > 卒業といふ二文字に送られてかの日かの時別れ告げたり 

(素蘭) (218 1444)

1451 > 限りなき出合い愉しき人の世の蓋し別れの辛きを耐へむ 

(重陽) (218 1605)

1452 > 何事も別れ上手を尊ぶと嘯く人に一理あるかな 

(堂島屋) (218 2033)

1453 > 梅が枝の一節春に嘯ける源氏の君のいとどめでたし 

(素蘭) (219 0039)

1454 > 花風や踏みては惜しむ同じくは輝く一輪少年の春 

(春秋) (219 0207)

1455 > 生命線を変へむとその掌を釘をもて彫りにき少年寺山修司

(たまこ) (219 1319)

1456 > 剽窃の非難浴びつつ生涯を虚構に遊ぶ〈自己なき男〉 

(素蘭) 『寺山修司・遊戯の人』(杉山正樹著) (219 1941)

1457 > 自己という物があったらすがりたい書を捨て街へ無常を学びに 

(春秋) (220 0035)

1458 > すべからく動きの中に吾ありぬ思ふ思はぬするもせずとも 

(重陽) (220 0837)

1459 > 自らに向きあはむと発つ修行僧をテレビに観てをり吾はどんより

(たまこ) (220 2047)

1460 > どんよりと曇りし空のひとところ春風の淡き色の兆しぬ 

(萌) (220 2359)

1461 > ほのぼのと春思はせる霞きて雪の嶺にも淡き色差す 

(素蘭) (221 0136)

1462 > 頂きに淡き色さす冨士の嶺暫しののちに春の日昇りぬ 

(重陽) (221 0549)

1463 > 十年後もそれより先も朝霧に鳴く鳶の声をたぶん聞きゐむ

(たまこ) (221 1052)

1464 > ほのぼのと朝霧消えて嶋晴れぬ明石の橋をくぐる釣舟 

(堂島屋) (221 1246)

1465 > ほのぼのと霞初めたる春の日は空に透きゆく口笛(ふえ)とならまし 

(素蘭) (221 2004)

1466 > ほのぼのと思わせるものその光。

誘われるそよ風みどりそのおかげ。

全て繋がり阿頼耶識私はいない生かされて。

彷徨いつづけ花の香はサン・テスプリか色の空。

鐘はひびいて喜びはあなたと共に永久の声。                                      
私は何かその果ては約束の地よまだまだ遠し 

(春秋)  (221 2257)

1467 > 誘われるやわらかき日々よこの思い宇宙の風よあなたと共に 

(春秋) (221 2302)

1468 > この星のとてもやわらかい部分に触れた気のする乙女座の歌会 

(萌) (221 2346)

1469 > 初夏の夜空いろどる乙女座の女神麦の穂持ちて麗し 

(素蘭) (222 0058)

1470 > 凍む夜半の北への道に北辰を見つめし頃の青き思いは 

(重陽) (222 0939)

1471 > てのひらの小銭を男が数へをり夜の自販機の青き灯のなか

(たまこ) (222 1016)

1472 > 自販機をなくせば二基の原発がいらぬと語る男のありき 

(素蘭)  (224 0018)

1473 > 我もまた麦茶緑茶のボトル買ひ食の社会化嘆きつつ飲む

(しゅう) (222 2205)

1474 > 自販機の許さぬ札の紫のお札も吾もこの国なるぞ 

(重陽) (222 2233)

1475 > 天帝のゐます紫微垣(しびえん)北辰を衛るべしとぞ古歌にはあれど 

(素蘭) (223 0037)

1476 > 西行の過ぎり行きにし山里に生(あ)れて微かに綿毛を飛ばす

(たまこ) (223 0839)

1477 > 妹のがりあふさきるさに見し月の今宵は見えず瀧とよむらし

(堂島屋) (223 1324)

1478 > かくすればかくなるものと知りながらなほ言ひつのる人の世の闇 

(素蘭) (223 2119)

1479 > つれづれに雨だれの音ききおりし時に愁ひて時に楽しぶ 

(重陽) (224 0643)

1480 > 雨の日のつれづれに開く鳥図鑑 鳥の横顔ばかりが並ぶ

(たまこ) (224 0907)

1481 > また開く初三郎の鳥瞰図 鳥の目となり春にたゆとふ 

(素蘭) 吉田初三郎(1884〜1955) (224 1612)

1482 > 鳥の眼と虫の眼を持ち新しき町のたたずまいに触れにゆく 

(萌) (224 1735)

1483 > 街なみの今はさびれし故郷の幼な心に大志を与ふ(重陽)

(224 1843)

1484 > 朝にけに仰ぎし初代校長像ねびてし訪へば小さかりけり 

(堂島屋) (224 1936)

1485 > 渓谷にかかる吊橋今訪はば幼目に見し景や褪せなむ 

(素蘭) (225 2156)

1486 > ことごとの今に伝へしいにしえの人折々のいよよ大なり 

(重陽) (225 0728)

1487 > 里人の守りたまひし薄墨の桜今年もいのち咲かせむ 

(素蘭) (225 1426)

1488 > 千年の大公孫樹日溜りにリスをむかへて春をよぶなり 

(重陽) (225 1813)

1489 > 神さびし縄文杉は芽吹きたる日の風音の記憶とぢこめ 

(堂島屋) (225 1826)

1490 > やはらかに芽吹く雑草(あらくさ)踏みしめて野辺にたちなむ風となるまで 

(素蘭) (225 2157)

1491 > 歓迎の「君よ勝田の風になれ」幟はためくマラソン会場

(しゅう) (225 2315)

1492 > 雨風の生まれるところ白白と動物園に上がる噴水

(たまこ) (226 1209)

1493 > 病み上がり噴水のやうに生きようとレマンの湖畔あの季節のやうに 

(春秋) (226 2332)

1493 > 病み上がる噴水のやうに生きやうとレマンの湖畔あの季節(ころ)のやうに 

(春秋) (226 2337)

1494 > 白樺の樹に囲まれし湖畔より白き帆あげてヨット繰り出す 

(素蘭) (227 0045)

1495 > 葉のすべてが黄金(こがね)になりし白樺の静止ののちに微風にそよぐ

(重陽) (227 0610)

1496 > 春風に乗せてお届けいたします「花・花・花」がテーマの歌会報

(たまこ) (227 0957)

1497 > 春朝の真珠のような輝きに羽毛のように風にまどろむ 

(重陽) (227 1348)

1498 > 北風の「さよなら」ならむ朝の庭の真珠色した数枚の羽

(たまこ) (227 1547)

1499 > 46500シラブル重ね来し言の葉に咲く花もあらなむ 

(堂島屋) (227 2032)

1500 > 春風にイーリスの旗匂ひたつ語り尽くせぬフィオレンティーナ 

(春秋) (227 2149)