その5
●韻書の系譜 「漢詩の小道」にて使用してきた韻の分類は、現在、 主流となっている「平水韻 (106種類)」によって いますが、この分類に落ち着くまでの系譜を以下に示 し ます。 [魏]李登「声類」 [隋]陸法言「切韻」 [唐]李舟「切韻」 [宋]陳彭年「広韻」206種類 [南宋]劉淵(平水の地)「礼部韻」107種類=平水韻 [元]陰時夫「韻府群 玉」−106種類=平水韻 [清]勅撰「佩文韻府」−106種類=平水韻 4...ポイント(といわれている事柄) ★まずは、基本として一句を作る練習から。剣道の素振りの稽古のようなものです。 そして、クロスワードパズルを解くみたいに、言葉、(詩語とよびます。「作詩関 門」などの詩語辞典に載 っていますが、これだけではなかなかぴったりした言葉が 得られないように感じています。しかし、基本練習としては詩語辞典から採った言葉 で漢詩を作ることが大切です。と言われています)を集め、組み合わせていきます。 ★響きのいい言回しというか、気に入った文句を一つ考え、これを眼字とよびます が、これを中心に、この フレーズが映えるように、周りをクロスワードパズルのよ うに埋めていくというのもいいと思います。 ★古の名作の言葉を引用したり、下敷にしている詩も多く見受けられます。こうする ことによって、詩の中 に別の詩の世界を重ね合わせることができ、時間的にも、空 間的にも奥行きの深い詩ができると思います。 これは、模倣とは別の感覚のもので す。 ★思いを歌い込む場合、往々にして、「楽」「嬉」「悲」という言葉をそのまま使っ てしまい勝ちですが、 なるべく具体的な物や動きによってその「情念」を表すよう にしていくと人の心を打ち、詩に重みが出てく るように思います。 この為には、十分、正確に風景や風物、人の動きを描写できるようにすることが大切 になってきます。 王昌齢の例を一つ 「斜抱雲和深見月」 どうでしょうか。「雲和」は琵琶の一種です。 「斜抱」に、意気消沈した様が見え ると思いませんか。 ★漢詩の上達の上で、よく言われていることに「三多」というのがあります。 これ は、「多読」、「多作」、「多商量(比較検討)」の三つのことがらで、漢詩に限ら ず、一つのことの 上達の基本だと感じます。 ☆今、漢詩の作り方の本とか、漢文の入門書とか読んでおりますが、こうした気持ち の奥には、「少しでも いいものを創りたい」という思いがあります。向上心といい ましょうか。これを満足させる一つの道として 漢詩創りを考えている次第でありま す。 5...漢詩の楽しみ 日記の代わりとして、その時々に感じた思いや感動した風景を漢詩にして残してお けば、後日、振り返った 時、感動がよみがえるような気がします。 又、「誰某の詩に和して作る」ということがありますが、まあ返歌みたいなもので す。劉長卿の詩に和して 創った時、ある人から「古の詩人とセッションしているよ うですね」と言われ、「ああ、そうだな。なんて素敵なことなんだろう」とつくづく 感じたことがあります。これも又、漢詩の楽しみの一つではないでしょうか。 6...参考文献&参考URL(1997/02現在) ●参考文献 進藤虚籟「漢詩作詩小事典」木耳社\1,800詩語サンプル、各韻字一覧表付き ------------------------------------------------------------------------ 新田大作「漢詩の作り方」-作法叢書-明治書院\1,700詩語サンプル付き ------------------------------------------------------------------------ 林古渓「作詩関門」明治書院\2,800詩語辞典 ------------------------------------------------------------------------ 服部承風「初学詩偈法」大本山永平寺祖山傘松会\3,000詩語サンプル(少)、各韻字一 覧表付き 。例詩多し。 ------------------------------------------------------------------------ 「社会人のための漢詩漢文小百科」大修館書店\1,000広く浅くには好適。参考文献も 多々紹介。 ------------------------------------------------------------------------ ------------------------------------------------------------------------ ●参考URL(1997/11現在) http://www.age.or.jp/x/saiun/gakudo/(混んでいる時はリトライして下さい) http://www.at-m.or.jp/~n-kawa/index.htm http://www.potato.or.jp/~bunyan/rai/index.htm http://www.ipc.hiroshima-u.ac.jp/~cato/ http://www.cent.saitama-u.ac.jp/kanshi/kanri/head.html 7...おわりに 皆様方の興味のきっかけとなればと、ざっくり漢詩創りの話しをしてまいりまし た。不十分なところが多々 あり、申し訳ないと思っています。 雰囲気だけでも感じとって頂けましたら嬉しく思います。 尚、さらに個々の詳細 な説明ができましたらお知らせ致します。 8...梅足について ------------------------------------------------------------------------ 1959/03/17 愛媛県宇和島市生まれ ------------------------------------------------------------------------ うお座、A型 ------------------------------------------------------------------------ 好きな漢詩作家/模索中 ------------------------------------------------------------------------ 学生の頃はバイクで日本中を旅して廻っていました。 ------------------------------------------------------------------------ ●私の漢詩との関わり。 高校の漢文の睡眠学習の成果(笑)として、唯一心に響いているものがあります。 「西の方、陽関を出づれば、故人(知己の意)なからん。なからん。なからん。故人な からん。」と先生が吟詠してくださったフレーズです。 この、心に刻まれた芽が、NHKの「人形三国志」(私が社会に出た時が初放映でした) で発芽し、「漢詩紀行」を肥やしに成長したといった感じです。 学生時代には先の 詩だけでしたが、今の年(己亥の歳生まれ、37才)になって、漢詩に触れると何故だか 心に響いてきます。もっと早く漢詩に親しんでいれば違う生き方があったかも知れま せん。 初めて作詩したのは、去年(平成八年)の秋です。例の高校のOB会のメーリングリスト に参加する時の自己紹介文にと思い立って作りました。それ以来、メールのシグネ チャに漢詩を添付するようになって作詩が進みました。その高校の漢文の先生も、こ の春校長職を退かれることになり、先日、退任に寄せた漢詩を差し上げたばかりで す。 まあ、こんな駆け出しの「初学」の身で「漢詩」の講釈なぞ、大それたことですが、 少しでも、多くの方に漢詩を作る楽しみを味わって頂きたい、という一心だけです。 解りにくい点や間違い等どしどし指摘して下さい。 |